私とケビンは、かなり微妙な位置にいる。 【シルシ】 私とケビンは幼馴染だ。 一番近くて、だからこそ切なさ倍増な距離に、私はいる。 私は、ケビンが好き。 大好きだ、誰よりも。 世界で一番、愛していると言ってもいい。 この思いを伝えようと、何度思っただろう。 だけど、いつも『愛してる』という言葉を飲み込むのは、返事を聞くのが怖いから。 返事を聞くことで、この微妙な距離にさえもいられなくなるのが怖いから。 だったら。 この関係が壊れるくらいなら、伝えられなくてもいいかな、なんて考えているのだ。 ・・・結局、逃げているだけだけど。・・・ハァ・・・。 「珍しいな、。お前が元気ないだなんて」 頭を垂れて小さくため息をついたら、後ろからそんな声が聞こえた。 大きく心臓が跳ねたのは、急に声をかけられてビックリしたからっていうのもあるけど。 でも、それ以前に。 「ケビン・・・!いつからいたの?」 声をかけてきたのが、ケビンだったから。 ケビンは少し不機嫌そうに「さっきから」と答えると、持っていたラケットをベンチの上に置いて「いちゃ悪いかよ」と言った。 今は、部活中。 私はこのテニス部でマネージャーをやっている。 マネージャーの仕事は、最初こそ大変だったけれど今はそうでもない。 寧ろ、私はマネージャーをやっているのが大好きだ。 みんな優しいし、何よりケビンのテニスをしている姿が見れるから。 テニスをやってるケビンの真剣な顔は、ものすごくカッコイイ。 「ほら、行くぞ」 「へ?行くって・・・どこに?」 急なケビンの言葉に、私は聞き返す。 するとケビンは呆れた顔でため息をついた。 「まったく・・・買い出しだよ。お前が今日行くって言ったんじゃねぇか」 うん、言った。 確かに言いましたよ、お昼ご飯一緒に食べてる時に。 でもさ・・・ 「なんでケビンまで?」 「アホか。お前一人で全部もてるわけないだろ」 「・・・ごもっともで」 そう言うと、私は首をすくめる。 確かに、メモに書き出した買うものリストは、とても私一人じゃ持ちきれないであろう量だった。 ケビン・・・手伝ってくれるんだ。 なんだか嬉しくて、私は口元が緩むのをおさえながら「ありがとう」と言った。 +++ 「ありがとうございましたー」 店員さんに見送られて店を出る。 買うべきものを全て買い終えて、私達は二人並んで歩いていた。 荷物は、軽い方を私が持って、重い方をケビンが持ってくれている。 「あ・・・」 通りすがった露天商。 私の目にとまったのは、売り出されていた指輪だった。 おもちゃではあるけれど、銀色のシンプルで格好いいデザインだった。 思わず、足が止まってしまう。・・・ちょっと、欲しいかも。 「どうした?」 「ん?いや、可愛いなーって思って」 足を止めた私にケビンが近寄る。 「これ」と私が指差した指輪を見て、ケビンは「ふーん」と言ったきりだった。 「お嬢ちゃん、これ気に入ったのかい?」 「あっ、はい。シンプルで、格好いいですよね」 「お嬢ちゃんなら1ドルにオマケしとくよ。買わないかい?」 「うーん・・・そうだなぁ・・・」 ちょっと悩む。 欲しいといえば欲しいけど、買ってもつけなさそうだし。 でも欲しいし・・・。 頭の中で葛藤する私。そんな私の思考回路を遮断させる言葉が入った。 「買う。1ドルだな?」 声の方を向くと、ケビンが自分の財布を出していた。 「え、ちょ、ケビン!?」 「これくらい、俺が買ってやる。いつも世話になってるしな」 「え、でも、あの」 「それとも・・・俺に返品させる気か?」 そう言うと、ケビンは受けとった指輪を不機嫌そうな顔で見せる。 ・・・もう買ったのね・・・。 「ま・・・いっか。ありがたくもらっておきマス」 「あぁ」 「・・・お嬢ちゃん、その子と恋人同士なのかい?」 露天商のおじさんが不意にいった言葉に、ついピキキッと固まる。 受け取り損ねて落としそうになった指輪を慌てて掴むと、私は言った。 「ちっ、違います!!!」 「へぇ・・・その割には顔が赤いねぇ・・・」 「っ!!!かっ、帰ろう、ケビン!みんな待ってる!!!」 「あっ、おい!」 ニヤニヤして言ったおじさんの言葉に、私は更に顔に熱を感じた。 早歩きでスタスタと前を行く私に、ケビンは慌てて駆け寄る。 時はもう夕暮れ時。 もう誰もいない小さな公園を、私とケビンは歩いていた。 周りにビルが建ち並ぶこの辺の夕焼けは、いろんなビルの硝子に反射してやけに眩しい。 うう・・・ケビンにわかっちゃったよね・・・私の気持ち。 思わず、小さくため息をつく。 「・・・そんなに、嫌だったのか?からかわれたの」 ケビンがあたしに聞く。 ケビンの方に向くと、ケビンは私の方に顔を向けないで、顔も視線もまっすぐ前に向けていた。 「・・・ケビンが。その、嫌、でしょ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 嫌だな、この微妙な沈黙。 何か返答してよ、ケビン。 「・・・嬉しい、とか言ったら?」 「えっ?」 ケビンの口から出た予想もしなかった返答に、思わず耳を疑う。 ねぇ、今なんていった?驚いてケビンを見つめる私。 ケビンは、私の方に向くと、まっすぐに私の目を見ていった。 「好きだ、。世界で一番、お前を愛してる」 心臓が、大きく跳ねた。 鼓動がどんどん早くなっていくのが分かる。 顔の温度が上昇していくのが分かって、すごく恥ずかしい。 気付いたら、熱いモノが頬を伝っていた。 「なっ、泣くなよ!・・・嫌だったのか?」 慌ててそう聞くケビンに、私は口を押さえて首を横にふる。 嫌じゃない。ただ、嬉しいだけ。 嬉しすぎて、どうしたらいいかわかんないだけ。 「私も・・・ケビンの事・・・大好き・・・!!!」 声をなんとか出して、やっとそれだけを言う。 大好きの気持ちがあふれだして、もう何も言えない。 不意に、頬に温かく柔らかいものが触れた。 ケビンの手だ。 ケビンは、親指でそっと私の涙をぬぐうと、まぶたにキスをくれた。 そして、私が口を押さえていた手をとる。 さっきケビンに買ってもらってすぐにつけたあの指輪が、夕日に照らされてオレンジ色に輝く。 「これ・・・さ。ずっとつけてろよ」 「へ・・・?」 「“俺のもの”っていう、シルシだから。もう、誰にもお前を渡す気なんてないから」 私は、その言葉にただ黙って頷いた。 微笑んで顔をあげた私に、ケビンの顔がスッと近づく。 長く伸びた影が、ゆっくりと交わった。 +++ えーと、かなり久々に短編を書きました。 あ、甘いの書くのも久しぶりだなぁ、なんて思いつつ打ち込んでました。 ケビンがこれからも活躍しまくるのを期待してます! ケビン大好きです!以上!!!(逃 by.平 |
うわーん、素敵な夢小説を有難う御座います(ぺこぺこ
「シルシ」というのはそういう意味だったんですねvv
ケビンったら何て優しいんだろうv
私もケビンの今後の活躍に期待を持ちたいですvv20050224 氷雨のあ
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